キトゥルガラ(ラフティング)

キトゥルガラ(ラフティング)

キトゥルガラは絵のように美しい小さな町だ。首都コロンボからは85kmほどの距離で、ハットンやヌワラエリアの山々へと向かう途上にある。1950年代、山間に静かに佇むこの村落は、アカデミー賞受賞作として名高い『戦場にかける橋』の撮影地として脚光を浴び、1990年代からは、スリランカにおける急流下り――ホワイト・ウォーター・ラフティング――の人気スポットとなった。

キトゥルガラ全域を流れるケラニ川には、大きな急流が5ヶ所、小さな急流が4ヶ所あり、その大きな急流の方には、Head Chopper (急降下)、Virgin’s Breast (乙女の乳房)、Butter Crunch (バター・クランチ)、Killer Fall (殺人級の落下)、それからRib Cage (あばら骨)といったユニークな名前がついている。ホワイト・ウォーター・ラフティングとは通常、川において5〜6kmという一定距離の中で行われる中級レベルのアドベンチャー・エクスペリエンスのことをいう。安全面でのリスクも低く、過去にアドベンチャー・スポーツに挑戦したことがないような人にも相応しく、ただ単純に楽しい経験がしたいといった旅行者にも人気のアクティビティとなっている。

キトゥルガラには現在、グループ向けパッケージや、カスタマイズされたユニークなエクスペリエンスといったスタイルで、観光客に気分爽快なラフティング・エクスペリエンスを提供する企業がいくつかある。アドレナリンを放出させるのに病みつきになっている人達には、急流下りのスリルはたまらない筈であるし、それはアドベンチャー関連企業が顧客に提供する様々なトレッキングや、滝の懸垂下降などのウォーター・アクティビティにも同様のことがいえる。川でもっと静かなアクティビティがしたいという人々に対しては、一人乗りや二人乗りのカヤックも提供されている。こうしたサービスのあらゆる局面において、近代的なボート、専門的な安全装置、さらには訓練を受けたインストラクターやガイドが配備されている。

スリル満点のホワイト・ウォーター・ラフティングのエクスペリエンスを楽しむのに、年間を通して最も適した時期は豪雨が続いた後であり、それは通常5月頃に始まる。上流の流れがケラニ川を増水させるため、急流は一層速くなり、その勢いも一層激しくなるのだ。アドベンチャー関連企業は川の水位を測定し、地元の天気予報を常に把握し、さらには川の流れが予測不可能となるような激しい豪雨の時期は避けるよう注意している。

キトゥルガラの地名は、キトゥル・ヤシが由来であり、かつてはこのヤシの木立がこの地域全体を覆いつくしており、地元の人々はこのヤシからヤシ糖と糖蜜を生産していた。こうした家内工業は、現在に至るまで存続しており、この地域の地元旅行会社は、ヤシ糖製造業者や地元の人々の生活風景を見学する村落訪問ツアーも手配している。1957年公開のデヴィッド・リーン監督による傑作『戦場にかける橋』(1958年の最優秀映画賞を含むアカデミー賞7部門受賞)の主要撮影地として、キトゥルガラには本作ゆかりの場所が所々に点在する。一部、年配の地元民の中には、映画のセットにおいてエキストラや、映画クルーのための機材運搬係となった経験談を持つ人々もいる。ほぼ全ての住民が、かの名画のために建設された木製の橋の所在を説明できるのだ。(木製の橋は現在この場所にはなく、映画撮影後に撤去された。)

鬱蒼としたジャングル、険しい露頭、網の目状に地表を巡る小川、淡水池。こうしたものがあるからこそ、キタラガラは、一人静かに穏やかな時間を満喫でき、驚くほどリラックスできる場所となっている。アドベンチャー・スポーツにそれほど気乗りがしなくても、ヤシの木立や水田に沿って歩いたり、淡水池で静かに水浴びをしたり、バード・ウォッチングをしてみたり、自然の中に身を置いて英気を養うなど、屋外の世界の美を愛でて時を過ごすのもいい。

首都コロンボにも近いため、キタラガラは日帰りの旅行先として理想的といえるが、一方でこの地域には、こじんまりとして環境に優しい民宿や遺産的価値のある別荘といったものもあるため、この美しい環境に囲まれながら数日滞在するという選択肢もありうる。

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