スリランカの伝統的な舞踊衣装

スリランカの伝統的な舞踊衣装

スリランカの舞踊衣装はとても精巧な作りになっており、各々にその独自のいわれがある。ここでは、有名な舞踊の中から数点の衣装を選び、豊かなスリランカ舞踊文化を紹介したい。

スリランカ発祥のほぼ全ての舞踊のルーツは、「コホンバー・カンカーリヤ」という精巧な儀式舞踊に求めることができ、パンドゥワスデウ王の癒しとして語られた神話を彷彿とさせる。男性のダンサーのみが舞い、舞踊とドラムのリズムは互いに酷似している。コホンバー・カンカーリヤに関わる精巧で秘密めいた儀式と伝統は、その衣装や装飾品にもそのまま受け継がれている。

キャンディアン・ダンスには4つの異なったタイプ――ヴェス(通常、キャンディアン・ダンスの唯一の形態と捉えられている)、ナイヤンディ、パンテール、そしてウデッキ――がある。この中で最も儀式的なのがヴェス・ダンスである。

男性のダンサーの衣装はスーセタ・アブハラナ、言い換えると「64個の飾り」と呼ばれるもので、コホンバーの神が身に着けていたものを模していると言われている。こうした衣装の中でも最も外観が際立っているのが頭に装着する手の込んだ飾りで、銀製のティアラ、額部分のプレート、7本の銀製の線状の輪止めで作られた王冠のような装飾品である。全長45インチの長いリボンが、この頭飾りの頭頂部にある円錐型の飾りから垂れ下がっている。ヴェス・ダンスは、伝統的な要素を多く残した舞踊であり、その中にはダンサーが、下半身を包むひだ付きの白い衣を優雅に纏う過程を表した儀式も含まれている。耳を覆うトドゥ・パティというマンゴーの形をした飾り、腕にはコブラの形をした覆い、それから胸部にはアビュル・ヘラという象牙細工とビーズ製の鎖の飾りを身に纏うと、ヴェス・ダンスのダンサーには、その舞踊のステップを一歩踏み出す前に、既に畏敬の念さえ感じさせる気配が宿っている。

ヴェス・ダンスのダンサーの衣装は、伝統的で神聖なものである為、自宅に保管することは許されておらず、聖堂の別室か、村の寺院に収納しておかなくてはならない。頭飾りやその他の装飾品は、ヴェス・ペッティヤという特別に編まれた二重蓋の四角い箱に入れて保管し、この箱は通常、公の場に持ち出す際には白い布でくるむ。これらの装飾品は世代ごとに受け継がれ、儀式性に富んだ祭事に用いられていく。

他のキャンディアン・ダンスの衣装はこれほど精巧ではないものの、それでも特色に富み、人目を引く存在感がある。ナイヤンディやウデッキのダンサーは、簡素な白いターバンを身に纏い、ウデッキのダンサーは長さの違うターバンの先端をたなびかせて踊る。ナイヤンディのダンサーは、ひだ飾り付きのティアード・スカートのような、赤い縁取りのあるプリーツの服を着ており、精緻な細工の胸飾りや贅沢な装飾が施された首周りの布が、この簡素な衣装に彩りと優雅さを添えている。

ウデッキのダンサーは、小さくて砂時計のようにくびれた形のウデッキ・ドラムを演奏しながら踊るのだが、赤い縁取りのある白いプリーツの服と手の込んだビーズの装飾を施したジャケットを着用し、ありふれた腕輪、イヤリング、胴回りの装飾品を身に着けている。パンセルのダンサーは、ダンスの一環としてタンバリンのような楽器を演奏し、簡素な衣装で同様のプリーツ服を着ているが、ビーズ装飾のジャケットは纏わず、簡素な白いハンカチをウエストのところで結んでいる。

もっと寛いだ、屈託のないスタイルの舞踊がサバラガムワ・ダンスであり、スリランカ中部を発祥の地としている。衣装は同様に簡素で、腰には布を、足には鈴を、柔らかい椰子の葉でできた頭飾りを着けている。

スリランカの民族舞踊は色彩が豊かで、人をワクワクさせ、そしてエレガントだ。多くのダンスは、泉で水を汲む様子(カラ・ゲディ・ネトゥマ)や、米の収穫を表現したハーヴェスト・ダンスなど、農民の生活の様々な面を切り取って描いてみせたものである。全てのダンサーが男性という、キャンディアン・ダンスの古典型とは異なり、これらの民族舞踊では女性が主役を務める。こうした舞踊はコミュニティの行事を祝って戸外で舞われることが多い。女性のダンサーは通常、伝統的な衣装に身を包み、色彩豊かなプリント柄の丈の短いジャケットを纏い、多くの場合、生花を髪飾りにして髪を束髪に結い上げている。仕上げに簡素なビーズの鎖の宝飾品とガラスの腕輪を着ければ、この衣装の出来上がりだ。

タミルのコミュニティには、インドの舞踊形態から派生した独自の舞踊形態がある。最も人気があるのがバーラタ・ナティヤムとカタカリ・ダンスである。バーラタ・ナティヤムは古典的な南インドの舞踊であり、チダムバラム寺院で発見された彫刻から着想を得て生まれ、現在では主に女性が舞う。金色の刺繍を施した縁取りのある、精巧な美しいひだ飾りを付けた明るい色の絹製のサリーを纏い、サリー・スタイルか、サリーで脚全体を覆うゆったりとしたパンツ・スタイルで舞うことにより、この舞踊全体の美においてこの衣装の魅力が十分に引き出せるよう、舞踊のステップも意図的に考えられてつくられていることが分かる。寺院の宝飾品と呼ばれる重厚な宝飾品は、サランガイという足首のベルと一緒に、サリーと共に着用される。

見る者を脅かすような仮面、跳躍、回転、そしてドラムを激しく叩くリズムと歌を繰り広げるデビル・ダンスは、主としてスリランカ南部に見られる舞踊であり、エンターテイメントの形態というより、癒しの儀式と考えられている。デビル・ダンスは(舞うのは男性のみ)それぞれ、衣装のバラエティに富んでおり、ダンサーは、木製で自ら彫刻を施した悪魔の仮面を被り、色鮮やかな刺繍を施した長袖のジャケットと、ひだ付きのスワール・スカートを纏う。

対照的に、コーラム・ダンスも仮面を被るタイプであるものの、人々をドッと笑わせる為に創られた、純粋なエンターテイメントの形態の舞踊である。コミュニティ内の戸外の場所で舞われるコーラム・ダンスは、民話を題材にしているものが多い。ダンサー達は、衣装としてカラフルなごく日常的な服を着込み、異様か或いは可笑しな表情と風貌を表した彫刻の仮面も被る。

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