スリ・サンガボ王にまつわる物語

スリ・サンガボ王にまつわる物語

スリランカの古代史を記した年代記マハヴァンサの伝えるところによると、王子サンガボの誕生に際し、占星術師達は「この御子はいずれランカ国の王として君臨するであろう」と予言したのだという。王子の父は、このことが当時の王の耳に入ると、幼い我が子を密かに亡き者にしようとするのではないかと案じて、幼な子をその叔父に預けた。叔父は僧侶であり、名をナンダ・テロといった。

サンガボ王子は叔父とともに暮らしながら、寺院の中ですくすくと育ち、サンガティッサとゴタバーヤという、別の二人の王子達がその親友となった。ある日、叔父のナンダ・テロは、この王子達をアヌラーダプラの宮殿へ連れて行くことにした。宮殿へと向かう道すがら、ひとりの盲目の賢人が彼らの足音に耳を傾け、こう声を掛けた。「ここにおわすお三方、貴き王子達は、いずれどのお方も、ランカ国の王となられるであろう」と。

彼らがアヌラーダプラに到着すると、当時ランカ国を統治していたヴィジャーヤ王は、彼らの姿を見て喜び、それぞれに宮殿の様々な高い役職を与えた。数年後、王室の軍の司令官となっていたサンガティッサ王子がヴィジャーヤ王を降して王位に就いた。彼は4年の間、君臨したが、毒入りの果物を口にして死んでしまう。

次に、止むなく王位を継承したのが、サンガボ王子であった。彼はスリランカに君臨した王の中で最も心優しく公明正大な王であったと言われている。彼の統治下で国は栄え、国民からはこよなく愛された。

ただ、サンガボ王が国民の信望を集めてゆくのを快く思わない者がいた。王位を主張して軍隊とともに都に入った、彼の王位継承者である。そこでサンガボ王は、多くの命が失われることのないようにと、飲み水を漉すのに使う小さな椀と布きれ一枚だけを携えて都を後にする。それからというもの彼は求道者となり、各地を転々とし、ついにアッタナガーラに到着すると小さな池のそばに居を定めた。

そうしている間にも、新王はサンガボ王が軍とともに舞い戻るのを恐れ、「サンガボ王の首を持ち帰った者には金貨千枚の褒美をやる」などと約束して、その首に懸賞金をかけた。あまたの欲深い輩が、人の首を切り落としては差し出し、新王を欺こうとした。しかしそうした輩はその見返りとして、虚偽をはたらいたかどで殺されることとなった。

ある日、アヌラーダプラからやって来た貧しい男が、アッタナガーラの森の中を巡り歩いていて、ふと瞑想に耽るサンガボ王に出逢った。男は王を隠遁者と思い込み、自らの糧を王に施した。王が国の世情について問うと、首切りや殺人が行われていると旅人は言う。この話に、王はひどく心を痛めた。そして旅人に自らの素性を明らかにすると、自分の首を切り落として新王のもとに持っていくようにと乞う。そうして懸賞金を手に入れ、この流血の惨事も終わらせてほしいと。旅人がこの頼みを断ると、王は「自分のこの行いに私心などない。だからどうか、この首が我が身から切り離されますように」と願いを込めて言い、そう唱えながら、そばにある池に布きれを浸し、それで自らの首を拭った。すると、なんと王の首は、体から離れて落ちたのだった。

旅人は、その首を新王の元へと持って行き、懸賞金を手にした。しかし新王は、サンガボ王が己が命を捧げた話を聞くと、これまでの自らの所業を思って自責の念に苛まれた。そうした訳で彼は、サンガボ王が命を捧げたという場所に、大きな寺院を建立するにいたったのである。

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